2022年度の改正で変わる?住宅ローン控除の基本情報と適用条件を確認しよう

マイホーム(中古住宅)

住宅購入は多額の資金が必要なため、ローンを組んで少しずつ返済していくという方法が一般的です。人によって月々の返済額は異なりますが、いつもより多く支払うボーナス払いの月などもあるため、ローンの支払いが家計の負担になるケースも少なくありません。そこで活用したいのが住宅ローン控除という制度です。それでは、住宅ローン控除とはいったいどういう制度で、そしてどのようにすれば制度を利用できるのでしょうか。今回は、住宅ローン控除の基本情報について解説します。

住宅ローン控除とはどういう制度?

住宅ローン控除とは、ローンによる家計の負担を減らし、国内経済を活性化させる目的で作られた制度です。正式な名称を住宅借入金等特別控除といい、住宅ローン減税とも呼ばれています。住宅ローン控除は、ローンの残債そのものを減額できる制度ではありません。住宅ローン残高に基づいて、所定の金額を税金から差し引くことができる制度です。具体的には、住宅購入にあたってローンを組んだ場合に、年末時点での住宅ローン残高の1%に相当する金額が、所得税や住民税といった特定の税金から控除されるという仕組みになっています。控除額の最大金額は40万円という制限がありますが、制度を利用すれば新居に入居してから10年続けて控除を受けられるという税制優遇制度です。

ただし、税金に関する制度は状況によって改革されることがよくあります。実際、2022年度から行われる税制改正のあおりを受けて、住宅ローン控除の要件も少し変わることが決まっています。上に挙げた条件も変更される部分があるので、制度を利用してしっかり優遇措置を受けるためにも、どの部分が改正されるのかきちんと確認しておくことが大切です。

2022年度の改正による住宅ローン控除の変更点

2022年度から実施される税制改正によって、住宅ローン控除は控除率や控除期間などにいくつかの変更点が見られます。まず、控除率に関しては、以前は「年末ローン残高の1%に相当する金額」だったものが、改正によって「年末ローン残高の0.7%に相当する金額」に変更されています。つまり、控除してもらえる金額が以前に比べて減額されたということです。

次に、控除期間の変更です。以前の制度では、控除を受けられる期間は入居後10年間とされていましたが、制度改正によってこの期間は13年間に延長されます。ただし、13年間の控除期間が適用されるのは、これから新しく住宅を取得する場合に限られ、既に制度を適用している既存住宅の控除期間は10年のままで変わりません。

また、控除されるローン残高の上限にも変更点があります。これまで、上限は4000万円でしたが、新しい税制では3000万円に引き下げられました。ただ、ローン残高の上限は住宅の種類によって変わってきます。たとえば、認定長期優良住宅や低炭素住宅の場合、ローン残高の上限は5000万円までです。加えて、今回の改正で住宅ローン控除を適用できる住宅の種類も増え、新たにZEH住宅と省エネ基準適合住宅が加えられることになりました。

基本的な変更点は以上の通りですが、他にも細かい改正点がいくつか見られます。たとえば、既存住宅の築年数要件が緩和されたり、新築住宅の床面積要件が緩くなったりといった点です。これらの変更によって、以前より適用条件が緩くなったと見ることができます。その一方で、控除率の減額によって、1年で受けられる最大控除金額も40万円から21万円に減額されるなど、適用条件の緩和と引き換えに受けられる恩恵は小さくなったという印象です。

しかし、環境に適応した住宅が新たに住宅ローン控除の対象として加えられるなど、環境に優しい住宅を取得した場合に関しては、より大きな恩恵を受けられる制度設計となっています。中古住宅より新築住宅のほうが優遇されている点も合わせて見ると、税負担を減らして国内経済を活性化させるだけではなく、環境に優しいクリーンな社会づくりを目指すという目的も制度改正の背景として隠されているといえるでしょう。

住宅ローン控除にかかわらず制度の改正はしょっちゅうあるから、できれば制度を実施している行政のホームページなどでその年の情報をしっかり調べよう。

住宅の種類によって異なる!控除を受けられる住宅ごとの条件

住宅ローン控除は、すべての住宅に適用されるわけではありません。たとえば、投資目的で購入した住宅は、2022年度の改正に関わらず、住宅ローン控除の適用対象外です。また、同居の親族から購入した住宅も、控除を受けることはできません。このように、住宅ローン控除を適用するためには、所定の条件を満たしている必要があります。特にわかりにくいのが、住宅の種類に関する条件です。住宅には、新築、中古、リフォームといった種類があり、それぞれ控除の適用条件が異なります。

新築住宅の適用条件

新築住宅を購入した際、住宅ローン控除を受けるためには、まず借り入れした人の合計所得金額が3000万円以下である必要があります。所得の多い人は、控除を受けられないということですね。それから、住宅が完成した日、または取得した日から6カ月以内に入居していることも条件です。住宅ローン控除は居住用の住宅に対して税を優遇する制度ですから、実際に住むことのない物件は対象外になるということです。

その他、住宅ローンの返済期間が10年以上あることや、住宅の床面積が50平米以上あることなども条件になります。このように、新築物件で住宅ローン控除を利用するためには、主に一定の居住用スペースが確保された住宅で、長期ローンを組み新規で住宅を取得した場合に限られるということです。

中古住宅の適用条件

中古住宅の場合は、新築住宅の適用条件に加えて築年数と耐震基準に関して所定の条件を満たしていなければなりません。まず、築年数に関しては、2022年度の改正で「1982年(昭和57年)以降に建築された住宅」であることが条件として設定されています。既成の税制では耐火建築物に関する条件が付されていましたが、改正によってこの条項は廃止され、一律1982年以降の物件ということに条件変更されました。

ただし、1982年以降に建築された住宅であっても、国が定める耐震基準を満たしていない住宅は控除を受けることができません。中古物件で住宅ローン控除を受けるためには、1982年以降に建築された新耐震基準適合住宅でなければならないということです。それ以外の所得や入居日、ローンの返済期間の諸条件に関しては、基本的に新築住宅の場合と同様です。

中古物件でも要件を満たせば控除を受けれるよ。

物件を購入する年に国税庁のページをチェックしよう。

税務署も質問すると教えてくれるよ。

リフォームした場合の適用条件

住宅ローン控除はリフォームした場合でも利用できることがあります。対象となるリフォーム工事としては、まず建築基準法による大規模な修繕や模様替えの工事であるということです。また、耐震改修工事やバリアフリー工事、省エネ工事なども、一定の工事規模を要するのであれば住宅ローン控除の対象となります。大規模な修繕工事ではなくても、居住部分の工事費が全体の回収費用の2分の1を上回っていれば、適用条件を満たす場合もあります。

ただし、リフォームした住宅が上記の条件に当てはまっても、工事費用の総額が100万円を超えていなければ控除の対象とはならない点には注意が必要です。特に気を付けたいのが、他の補助金を利用して別の控除を受けていた場合です。工事費用の総額100万円以上という条件は、補助金の控除によって差し引かれた後の金額です。他の補助金を使って工事費用の総額が100万円を下回ってしまった場合は、住宅ローン控除が受けられなくなってしまうので気を付けましょう。

必要書類を揃えよう!住宅ローン控除の申請方法

住宅ローン控除は、適用条件を満たしていれば自動的に恩恵を受けられるわけではありません。この制度は物件の取得に伴って所得税や住民税を優遇する制度ですから、制度の利用に際しては確定申告が必須となります。自営業者の場合は、毎年の確定申告手続きに合わせて申請するだけなので、そこまで問題は生じないでしょう。ただ、会社に勤めている場合、普段は自分で確定申告をする必要がないため、確定申告の手続き自体に戸惑いがちです。ですから、住宅ローン控除を申請する前に、まず確定申告の申請方法をしっかり確認しておきましょう。

住宅ローン控除のための確定申告には、管轄の税務署で申告する方法と、e-taxというインターネットから申告する方法の2種類があります。いずれの方法で申告する場合でも、まず確定申告に必要な書類を揃えなければなりません。確定申告に必要な書類は、マイナンバーカードが記載された書類や国税庁のホームページから取得できる確定申告書、源泉徴収票などです。必要書類は不備があるといけないので、管轄の税務署や税理士に相談してしっかり用意しましょう。

住宅ローン控除を申請するためには、確定申告の必要書類に加えて、次に挙げる書類も入手しておかなければなりません。まず、土地や建物の登記事項証明書、住宅借入金等特別控除額の計算証明書、不動産売買契約書や工事請負契約書、そして住宅ローン年末残高証明書です。登記事項証明書は居住地管轄の法務局で、計算証明書は国税庁のウェブサイトや税務署で入手することができます。住宅ローン年末残高証明書は、借り入れした金融機関から送られてくるはずです。

税務署で確定申告する際は、以上の書類を揃えて管轄の税務署にて手続きを行います。住宅ローン控除に関する手続きは、税務署窓口または市区町村の役所に専用の相談コーナーがあるので、係員に書類の具体的な書き方などを相談しながら必要事項を記入すれば間違いないでしょう。一方、e-taxから申告する場合は、マイナンバーカードの読取に対応したスマートフォンか、専用のICリーダーが必要になるので、なければ用意する必要があります。

e-taxでは、まず通常の確定申告を行い、住宅ローン控除の入力画面で「住宅ローン控除の証明書データの交付を希望する」という項目を選択します。そうすることで、所定の画面に移動できるので、売買契約書や登記事項の内容証明書、年末残高証明書の内容などを入力して、最後にデータを送信すれば申請することができます。

実際の金額は?控除額をシミュレーションしてみよう

住宅ローン控除が適用されたら、実際にどの程度の控除を受けられるのでしょうか。具体的なケースを挙げてシミュレーションしてみましょう。たとえば、本人の年収500万円の4人家族で、所得税額が10万円、住民税額が20万円、住宅ローンの借入額が4500万円、そして年末時点でのローン残高が4400万円だったとして控除額を計算してみます。この場合、住宅ローン控除を受ける条件を満たしているため、年末時点のローン残高の0.7%に相当する金額が所得税及び住民税から控除されることになります。

ただし、控除額の上限は21万円です。年末時点のローン残高が4400万円ですから、本来ならその0.7%の30万8000円が控除額に相当する金額になるところ、上限を超えているためこの場合は最大控除額の21万円が控除されることになります。このケースの所得税額は10万円ですから、今回のシミュレーションでは所得税は全額控除されるという計算です。残りは住民税の控除に回され、この事例では20万円だった住民税から11万円が控除されることになります。つまり、当シミュレーションでは控除額の上限21万円が満額控除され、本来なら総額で30万円支払うはずだった税金が9万円まで減額されるという計算になります。

ただし、今回のシミュレーションでは問題ありませんでしたが、住民税から控除する場合は「所得税の課税総所得金額等の合計額の7%」という別の条件が付帯することには注意が必要です。また、住民税の控除は上限が13万6000円までとなっている点にも気を付けましょう。ちなみに、控除額が余った場合、その余剰分については翌年度の個人住民税に繰り越されるので安心です。当シミュレーションはあくまで概算に過ぎないので、より細かい金額が知りたければ、以下のシミュレーションサイトで詳しい控除額を計算してみましょう。

【イー・ローン】住宅ローンの控除(減税)シミュレーション|住宅ローンの検索・比較・申込みならイー・ローン
住宅ローンを借り入れた際の住宅ローン控除による減税額を計算します。このシミュレーションは、令和6年度税制に対応しています。

情報にアンテナを!適用条件や改正大綱をしっかり確認しておこう

住宅ローン控除は、ローン自体を減らせるわけではありませんが、条件を満たせば税金面でかなりの優遇措置を受けることができます。住宅ローンによる家計の圧迫を少しでも緩和するためにも、適用条件をしっかり確認して制度を十分に活用しましょう。ただ、税制改正によって住宅ローン控除の適用条件にも変化が見られます。税制は経済状況や社会状況に応じて変わることがあるので、今後の情勢次第ではさらなる減税措置を受けられることもあります。なるべく情報に過敏になっておき、使える制度をしっかり利用できるようにしておきましょう。

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